論争の背景
 
Multiple Risk Factor Intervention Group, Multiple risk factor ntervention trial. Risk factor changes and mortality results. JAMA 1982; 248:1465-1477.

対象:高TC値、高血圧、喫煙などの危険因子を持つ人
実施事項:コレステロール仮説に基づく生活栄養指導、
       血圧コントロール、禁煙指導   
実施期間:平均7年追跡

血圧:ほとんど不変
喫煙率:有意に低下
TC値:不変
心疾患死亡率、総死亡率:下がらなかった
高血圧で心電図異常のある亜集団
⇒ 心疾患も総死亡も有意に上昇した。
Strandberg TE, Salomaa VV et al. Long-term mortality after 5-year multifactorial primary prevention of cardiovascular diseases in middle-aged men.
JAMA 1991; 266:1225-1229.

実施要項:最初の5年は、降圧剤、
高脂血症薬(スタチン以前の薬)を使った。
食事指導は15年にわたって続けられた。

TC値:まったく下がらなかった。
心疾患死亡率:2.4倍
                有意に介入群が高かった。 
総 死 亡 率:1.4倍
続報として、同グループによる18年の追跡調査が報告された。
(Strandberg TE et al. Brit Heart J 1995; 74:449-454.)
続報は、データと結論が合わないひどいものであった。
(Okuyama H et al. Prevention of CHD, from the cholesterol hypothesis to ω6/ω3 balance, Karger, Basel )
Verschuren WMM, Jacobs JR, Bloemberg BPM et al.
Serum total cholesterol and long-term coronary heart disease mortality in different cultures:twenty-five-year follow-up of the seven countries studies.
JAMA 1995; 274:131-136.

七か国(六地域)の集団を25年追跡し、TC値と心疾患の
相関を調べたもの。

高TC値群と低TC値群の心疾患死亡率の比(相対危険度)は、
米国とフィンランドでは2.5程度であったが、
日本の九州(農村・漁村の一般集団)では、ほぼ1であった。

米国とフィンランドの場合、平均値が異常に高く、
家族性高コレステロール血症などを多く含む集団であったと
推測される。
日本での相対危険度が「ほぼ1」であったということは、
「TC値と心疾患死亡率の間に正相関が認められない」と
いうことである。
わが国の医学界では、「……正相関がない」を
正しく評価していない。
この調査の総括として、わが国の医学界は、
「相対危険度1」を無視、
「文化を越えて、高TC値は心疾患の危険因子である」と
締め括っている。
この辺りから
コレステロール論争の口火がくすぶり始めたのでは……。
 
この調査の主催者は、
同じTC値でも相対危険度が地域によって大きく異なることから、
「食事などTC値以外の因子が予防には重要な因子である」と、
総括している。このことも、わが国の医学界は無視してきた。