日本動脈硬化学会 
 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版
および関連資料の
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噓偽り-その1
 
図1 隠蔽箇所
 NIPPON DATA80 を「一般集団の追跡調査の結果である」としている。しかし、一般集団とするには次のような問題があり、この問題を「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版」では触れてさえいない。
①国民栄養調査の対象者として無作為に選ばれた26,000人から、循環器系疾患基礎調査の採血・追跡に応じた人たちの集団であり、一般集団とはいえない。無作為的に家族性高コレステロール血症(FH)などが多く含まれた可能性が高い。 
②TC値の中央値と平均値に差があり、少数のTC値が異常に高い集団(FHなど)が平均値を上げている可能性が、原報(和文)には記述されている。ところが英文論文には書かれていない(隠蔽されている)。
③30-50歳代までが80%以上を占め、若年層の比重が大きい集団である(相対危険度の低い高齢者の割合が一般集団より少ない)。この背景を知らないと「コレステロールの心臓病に対する危険度は異常に高い」と誤って理解されてしまう危険性がある。
④高TC値群の総死亡率が高くなっている。これは他の疫学調査では見られない結果である(FHが多く含まれている可能性を示した結果であると考えられる)。   
  動硬GL2012では、これらの問題点を無視あるいは隠蔽し、あたかも一般集団に当てはまるかのごとき、記述がされている。 当てはめられた一般人に薬害発生の危険性が大である。
噓偽り-その2
脂質栄養学 2014; 23:71-78
図2 ねつ造箇所
 ☆19年間追跡したNIPPON DATA 80のチャートに基づき、10年-冠疾患死亡確率を計算して作ったチャート。男女別、血糖値で2群、コレステロール値で6群、血圧で5群、年齢で4群、喫煙状態で2群に分けてあるので、男性だけで480枠がある。計算した確率は0.5%未満から10%以上までを6色に色分けしてある。
 ところが男性4,098名の追跡で、実際には67名が冠動脈疾患で死亡した。枠は全部で80あり、赤枠だけで71個ある。この67名という少ない例数が480枠に分布されていることを考えると、それぞれの確率を求めることはほとんど不可能である。
  図の右半分(240枠)に対応する高血糖者の冠動脈疾患死亡は、わずか5名である。色分けされた枠の冠動脈疾患死の確率には20倍以上の差がある。
 すなわち、NIPPONDATA80に基づいてこのチャートを科学的に作ることは不可能である。それをあたかも統計手法により科学的に作られたかのように偽装(ねつ造)されている。
噓偽り-その3

図3, 4
冠動脈心疾患とコレステロール値の相関について
JACC研究、守口市民追跡調査、茨城県民追跡調査はNIPPONDATA80より規模が大きく、しかも結論が異なっている。動硬GL 2012はこれら論文の異なる二つの結果に言及することなくガイドラインを作っている(上述の10年-冠疾患死亡確率も同じ)。
脳卒中とコレステロール値の相関について
JACC研究、守口市民追跡調査、茨城県民追跡調査の結果は、コレステロール値と脳卒中死亡率が負の相関を示すこと(コレステロール値が高いほど脳卒中死亡率は低い)を示している。ところが動硬GL2012はこのことを隠蔽(無視)して、「脳卒中予防にもコレステロール値が低いほうがよい」とする誤った情報を世間一般に広報している。
噓偽り-その4
図5
 茨城県民追跡調査は、わが国で行われた一般集団についての最大規模のものである。これを含め、他の多くの論文が、コレステロール値が高い群ほど癌死亡率、脳卒中死亡率、総死亡率が低いことを報告している。
 動硬GL2012では、この重要な情報が掲載されていない。つまり一般人あるいは高脂血症者とその予備軍の治療にあたってこの重要情報が隠蔽されている。 
噓偽り-と共に把握しておくべき最重要事項Ⅰ

2004年に臨床試験に関する罰則付きの新規制がEUで施行された。 
新規制以前(1990年代)は、
  「スタチンはLDL-C値を下げ、かつ冠動脈心疾患に有効であった」
とする多くの臨床試験結果が報告され続けた。
新規制以降は、
「スタチンはLDL-C値を下げるが、冠動脈心疾患予防には効果がなかった」
とする多くの臨床試験結果が報告されている。
 動硬GL20012は、2004年以前の企業中心の論文を含むメタ解析の結果に基づいて、スタチンの有効性を繰り返し広報している。これは、問題の本質に目をそむけて、2004年前後のこれら臨床論文の質的な差にスポットを当てていない。
噓偽り-と共に把握しておくべき最重要事項Ⅱ

米国で発表された最新のコレステロールガイドラインと動脈GL 2012の整合性
従来のガイドラインは
NHLBI2)から出されたATPⅢ1)が最重要視され、
動硬GL20012も本質的にはこれに沿った内容であった。
 すなわち、冠疾患歴、糖尿病などの有無により、
あるいは一次予防と二次予防に分けてLDL-C値の管理目標値を定め、
コレステロール低下医療を行うというものであった。
このATPⅢがその後の多くの研究の結果と合わず、改訂版の発行が待たれていた。
 そして遂に、2013年11月12日、
米国心肺血液研究所2)と米国心臓病学会3)、米国心臓協会4)との共同で
新ガイドライン(略称 “ACC/AHA GL2013” )が発表された
 このガイドラインの最も大きな変更点は、
「LDL-C値の目標値(ターゲット)を決めスタチン療法を行うことは、
臨床的エビデンスを見つけることが出来ないために放棄する」
としたことであった。
 まさに動硬GL2012の骨子であり、
わが国の医療が日々それに沿って行われている部分について、
臨床的にエビデンス無しとされたわけである。
 このことはすでに長寿GL2010が指摘してある。
日本動脈硬化学会は最早これを無視できなくなった。
日本動脈硬化学会は早急の対応が迫られていることを強く自覚すべきである
1) ATPⅢ:Adult Treatment Panel Ⅲ、2004年改訂版
2) NHLBI:National, Heart, Lung and Blood Institute、米国心肺血液研究所
3) 米国心臓病学会:ACC;American College of Cardiology
4) 米国心臓協会:AHA;American Heart Association